防災に関する市民参加型まちづくりのデータ可視化研究で
群馬/横浜を拠点に活躍中

慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 後期博士課程2年

大野 友さん

髙島科学技術振興財団で、
奨学金を受給して良かったことはありますか?

金銭的な負担が減ったことです。さらに、新しいつながりが生まれたことです。受給期間が終わったあとでも、理事の方から連絡をいただいたり、OBやOGを紹介してもらったり、新しい関係が現在も広がっているのは、とてもメリットに感じます。

現在の所属や活動について教えてください。

慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科に在籍する後期博士課程の2年です。修士1年の時に、オランダのデルフト工科大学へ交換留学に行きました。
留学先では、防災についての研究に携わりました。そこで学んだことを活かしながら、防災だけに止まらず、市民参加型、市民中心のまちづくりを促進していくためのデータの可視化や活用方法について、現在は群馬県高崎市と神奈川県横浜市をフィールドにしながら、実践と研究の両面を進めています。

NPO法人でも活動されていると聞きました。

大学に籍を置きながら、issue+design(特定非営利活動法人イシュープラスデザイン)というNPOにも勤務しています。その活動のひとつとして、防災のシミュレーション型ゲームを設計しました。
例えば、台風が上陸したあとの24時間のあいだに、人はどういう行動を取るべきか。避難する、情報を得る、周囲に声掛けをするなど、自分と周りの人の命を助ける行動を、誰でもゲーム内で体験することができます。近年、気候変動で洪水や土砂崩れなどの災害が各地で起きている中で、これをより多くの人に活用してもらうための活動などをしています。

留学先のオランダでは、 具体的にどのような研究をされていたんですか?

「人々の防災に対する意識を、市民同士の対話を通してどのように高めていけるか」という研究です。防災とはいっても人にフォーカスした研究で、「市民の対話をどう促進させるか」「どうやって学びを引き出すか」ということを、いつも考えていました。

そのために、ワークショップもやられていたんですね。

オランダは、移民が多いんですね。そのためオランダ語がわからなかったり、治水の歴史を知らない人が多くいました。いざ災害が起きたときに、そういう人々にどうやって避難を促すか、という課題が浮き彫りになってきて…。そこで、防災に対する意識を高めるための仕掛を盛り込んだワークショップを設計しました。それを実践して、データをとって、ということを半年間やっていました。

データの伝え方や見せ方も重要なんですね。

そうですね。例えば、ハザードマップのように地図上で示してあげたり、アニメーションにしてわかりやすく解説したり、対話を挟むことで気づきや理解をより深めたり。どういう形でデータを可視化して伝えると、より学びが深まるのか。そういうことを常に考えて、(ワークショップの)設計に取り組んでいました。

防災意識や災害情報を発信する目的は、「適切な避難行動をすぐにとってほしい」という点です。どんなに正しい情報を流しても、聞いてもらえなかったら意味がない。聞かれていても、何をいっているのか理解できなかったら同じこと。避難行動に結びつけるために、(相手に情報を)届けるという最終ゴールを意識することは、とても重要だと思います。

そもそも防災という分野に興味をもったきっかけは何ですか?

衛星データをもっと活用できたら、災害などの社会課題の解決に役立つのでは、と気づいたことがきっかけでした。 大学院に入る前に、人工衛星を開発する会社でインターンとして働いていたことがありました。そこで世界中の衛星の用途やスペックを調べているうちに、衛星データの有用性が見えてきたんですね。例えば、災害が起きたときにいち早く避難指示を送ったり、被災が起きてしまったときに正確な状況把握をしたり。そういう理解が深まったことが、結果的に大学院へ進学するきっかけにもなりました。 使命感というには大袈裟かもしれませんが、防災は人の命を守る大事な仕事だと感じました。

お休みの日は何をされてますか?

6歳から続けているテニスと、走ることにハマっています。休日は、ほぼ走っていますね。近いうちに駅伝の大会に出場する予定で、その練習に励んでいます。走っていて、坂を下った先の平地を見ると「ここハザードマップが真っ赤だろうなぁ」とか思うこともありますね(笑)

大野さんと同じように、
奨学金を検討している学生に向けて一言お願いします。

研究したい人は、心から(研究を)楽しんでほしい。そういう思いが、強くあります。奨学金はそれを後押ししてくれる大きな力になると思うので、ぜひチャレンジしてほしいと思っています。
また、研究だけではなく、勉強やスポーツ、アートなど楽しむことができたら、きっと未来は開けていくはずです。どんな未来にコミットしたいのか、という視点をもってわくわくと前向きに取り組んでほしいと思います。